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商標法第34条第1項第13号の不正な目的の判断時の考慮事項-大法院2020フ11622判決(2022.12.1.言渡)[拒絶決定(商)]
弁理士 安希景

1. 事件の概要

本事件出願商標 先使用商標
 (1) 出願番号/出願日:第40-2015-74012号(2015.10.7.)
 (2) 構成: (済州日報のハングル)
 (3) 指定商品:商品類区分第16類の新聞
 (4) 出願人(請求人):株式会社済州日報放送

(1) 構成:제주일보(済州日報のハングル)、齊州日報
(2) 使用商品:新聞
(3) 先使用商標権者: 済州日報社

イ.異議申立に対する原決定(異議申立番号:第40-2017-3456号)の拒絶理由

商標法第34条第1項第13号に該当しているか否かの判断において、先使用商標の周知の程度、標章の類否については両当事者に争いがなかったが、「不正な目的があるか否か」については対立があった。

そこで、特許庁は、「本事件出願商標は、先使用商標に化体した信用と顧客吸引力に便乗したり、済州日報社または済州日報を継承している異議申請人に損害を加えようとするなどの不正な目的をもって出願された商標であるといえるため、旧商標法第7条第1項第12号(現商標法第34条第1項第13号)に該当して商標登録を受けることができない。」という拒絶理由により異議申立の認容決定を下した。

ロ.本異議申立に対して出願人は拒絶決定不服審判を請求した。

2. 特許審判院、特許法院および大法院の判断:不正な目的の認定

イ.特許審判院(2018ウォン4791) → 棄却審決(不正な目的の認定)

拒絶決定不服審判に対して審判院は、「本事件出願商標は、たとえ請求人が法院の強制売却手続を通じて取得した商標権が消滅して、それと実質的に同一の商標を出願したものであるとしても、請求人に「제주일보(済州日報のハングル)」、「斉州日報」標識の新聞を発行できる正当な権原がない状態で「제주일보(済州日報のハングル)」、「斉州日報」標識に蓄積された周知性の帰属主体である済州日報社またはそれを継承した異議申請人の同意なしに出願された商標であって、「제주일보(済州日報のハングル)」、「斉州日報」標識の名声と信用に便乗して済州日報社または異議申請人の新聞を発行する権利の行使を妨害しようとするなど不正な目的をもって出願された商標であるとみなければならない。」として棄却審決を下した。

ロ.特許法院(2020ホ2024) → 棄却判決(審決適法、不正な目的の認定)

特許法院は、「本事件出願商標は、その出願当時に国内で需要者間に特定人の商品を表示するものと認識されている先使用商標と類似する商標であって、不正な目的をもって使用した商標に該当するため、商標法第34条第1項第13号によりその登録を受けることができず、これと結論を共にした本事件審決は適法である。」という理由により棄却判決を下した。

ハ.大法院(2020フ11622判決) → 上告棄却(特許法院の判決適法、不正な目的の認定)

イ)出願商標の出願人に上記商標法第34条第1項第13号に規定した不正な目的があるか否かを判断するに当たっては、特定人の商標の認知度または創作性の程度、特定人の商標と出願人の商標との同一・類似性の程度、出願人と特定人間の商標を巡った交渉の有無とその内容、その他両当事者の関係、出願人が出願商標を利用した事業を具体的に準備したのか、商品の同一・類似性乃至は経済的牽連関係の有無、取引実情などを総合的に考慮しなければならない(大法院2013フ1986判決(2014.1.23.言渡)など参照)。

ロ)商標法は、商標を保護することによって商標使用者の業務上の信用維持を図って産業発展に寄与し、需要者の利益を保護することを立法目的として商標権登録と使用、関連争訟などを規定している。上記のような商標法など知識財産権関連法令は、全体法秩序の中で調和するように解釈・適用されなければならない。

商標法第34条第1項第13号は、既に特定人の営業上の信用や名声が化体された商標を模倣して出願することによって先出願主義による商標制度を悪用することを防止するための規定であり(上記大法院2013フ1986判決など参照)、その要件の「不正な目的」の解釈・適用も全体法秩序と調和しなければならない。

出願人と先使用商標を使用してきた特定人との間に、その商標および商標に基づいた事業体、関連行政上の認・許可または登録などを巡って何度も民事訴訟や行政訴訟などが確定したとすれば、このような一連の経緯と結果は「不正な目的」の解釈において矛盾しないように考慮されるべきであり、上記確定した民事訴訟などの判決で認められた事実は、特別な事情がない限り有力な証拠となる。

3. 商標法第34条第1項第13号の不定な目的の判断の具体的な内容

<済州日報の登録商標>

  標章 登録日 登録番号 無効審決確定日
済州日報の登録商標1   1997-09-29   40-0379115  2016-08-20 
済州日報の登録商標2 1997-10-31    40-0382276  2016-08-20 
済州日報の登録商標3 1991-09-27  40-222172   2015-05-01 

イ.原審判断の内容要約

原告は出願前に上記済州日報の登録商標3件を譲受した事実に基づいて先使用商標の地位を正当に継承する者であり、登録商標権の効力に期して自由に追加で出願できる権原を有する者であることを繰り返し主張したが、法院は、1)出願人は出願前に譲受した登録商標3件のうち1件の無効審決が確定し、残りの2件も無効となり得るという点を十分に予想した上で、その効力を維持するために本事件出願商標を出願した点、2)新聞社業譲渡・譲受契約が共に代表権濫用で効力がないため、済州特別道知事の地位継承申告の受理は当然無効であり、原告は新聞社業者などの地位を継承していない状態である点、3)済州日報社と原告との間の第1、2次譲渡・譲受契約が無効と判断された点、4)出願人の登録商標譲受過程を営業上の信用が共に継承されると評価できず、営業と分離して標識のみが移転される場合とみなして出願人は先使用商標権利者の地位を継承する者ではない点、などを理由とし、本事件出願商標は先使用商標の名声と信用に便乗して先使用商標権利者の新聞を発行する権利の行使を妨害しようとするなど不正な目的をもって出願された商標であると判断した。

ロ.大法院の判示内容

原審は、その判示のとおり、済州日報社の経営危機と「済州日報非常対策委員会」側による参加人の設立、済州日報社と参加人との間の約定、原審判示の済州日報登録商標に対する無効審決の確定、済州日報社と原告との間の第1、2次譲渡・譲受契約が、関連告訴事件、商標権侵害差止事件、新聞社業者地位継承申告受理の無効確認訴訟などにおいて全て無効と判断された内容など、済州日報社、参加人などを巡る一連の経緯を認めた上で、これを総合すると、原告は、本事件出願商標を出願した当時、済州日報社乃至参加人を表示すると認識されている先使用商標の名声と信用に便乗して不当な利益を得ようとする、または済州日報社の新聞を発行する権利の行使を妨害しようとするなど、不正な目的を持っていたと判断した。

原審判決の理由を関連法理と記録に照らしてみると、原審の判断に上告理由の主張のように自由審理心証主義の限界を外れるか、または商標法第34条第1項第13号の「不正な目的」に関する審理不尽、理由不備、法理誤解などの違法がない。

4. 示唆点

本判例は、商標法第34条第1項第13号の要件である不正な目的の判断において、その商標と関連して数度の民事訴訟や行政訴訟判決などが確定したとすれば、このような判断内容は「不正な目的」の判断において矛盾しないように考慮されるべきであり、特別な事情がない限り有力な証拠となるという点を明確に確認した。特に今回の事件は、「新聞法」など行政法上の規定および判例内容を商標法上の判断において矛盾しない限度内で考慮した点が注目される。

したがって、実際商標法第34条第1項第13号を主張する場合、商標法上の他の措置だけでなく、商標法上の論理に違背しない限度内でその商標権の譲渡・譲受契約に関する訴訟、行政処理無効確認訴訟など、その他法律の規定を積極的に活用し、その判断を有力な証拠として活用する方案を図るべきである。