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中国専利法中のデザイン専利出願に関する最新規定内容
中国弁理士 元慧蘭

2020年10月に改正された中国専利法は2021年6月1日から施行され、多くの内容が改正されているが、そのうち目立つ部分はデザインに関連した改正である。

改正された専利法は2021年6月1日から実施が開始され、それ以前(2021年5月31日)までに出願されたデザイン専利権は改定前の法律を適用し、その後に出願されたデザイン専利権は改正された法律を適用するが、改正された専利法を適用する出願に対して、中国国家知識産権局(以下、「CNIPA」という。)は、しばらく審査を保留し、改正された実施細則および審査指針が発表されれば、順次に審査を行う予定である。以下、専利法改正で施行が開始されたデザイン関連の改正内容と共に2022年5月5日から発効したハーグ協定加入による制度変更内容について考察する。

デザイン関連の改正内容

1. デザインの保護対象範囲の拡大-製品の部分形状に対する保護

改正前のデザイン専利権は製品の全体デザインのみを保護しており、これは米国、日本、韓国、欧州などの専利保護制度と比較すると、部分デザインに対する保護がなかった。国際貿易経済における取引の増加に伴い、当該制度もグローバル経済活動の流れに合わせるために変更された。

2. 国内優先権制度の確立

改正された専利法第29条には「出願人は発明または実用新案が中国で最初に出願された日から12ヶ月内、またはデザインが中国で最初に出願された日から6ヶ月内に、再びCNIPAに同一の主題で専利出願を提出する場合、優先権を主張することができる。」と規定された。改正前の専利法には発明および実用新案の国内優先権のみが許容されたが、当該内容の改正が行われることによって、デザイン専利出願も中国国内優先権を主張できるようになった。

3. デザイン専利権の存続期間変更

2021年6月1日以降に出願したデザイン専利権の存続期間は15年である。改正前のデザイン専利権の保護期間は10年であったが、デザイン専利権の紛争が多発しつつ、10年の存続期間は専利権を効果的に実施して権利を保護するのに有利でないとの理由により15年に変更された。また、ハーグ協定に加入するためにもこの改正は不可避な決定であった。

4. デザイン専利権の開放許与関連

専利権の開放許与は専利権者の自発的な許与方式であり、これは専利権ライセンス締結において交渉の難易度を低め、専利取引費用を低廉にし、専利取引および実施を推進する制度であり、専利権を社会的に実施する問題を解決することに目的を置いている。このような許与方式はデザイン専利権にも適用される。

ハーグ協定加入後、デザイン専利出願審査に関する臨時的な細部施行方法

前記改正内容のうち、デザイン専利権存続期間が15年となった最も大きな理由は、ハーグ協定に加入するためである。中国政府は2022年2月にハーグ協定加入申請を提出し、2022年5月5日からその効力が発生している。

ハーグ協定に加入し効力が発生したが、専利法システム改正は未だ完了していない状態である背景の下、CNIPAでは「ハーグ協定加入後、関連業務の臨時施行方法」について発表しており、これは次のような内容を含んでいる。この施行方法は2022年5月5日から施行されており、そのうち、実務的に重要なポイントを説明する。

1. 書類提出および費用納付期限

【第3条】 出願人が優先権を主張する場合、当該出願の国際公開日から3ヶ月内にCNIPAに先出願の副本を提出しなければならない。先出願の副本に記載された出願人と後出願の出願人とが一致しない場合、出願人は当該出願の国際公開日から3ヶ月内にCNIPAに関連証明文書を提出しなければならない。出願人が優先権を主張する場合、当該出願の国際公開日から3ヶ月内にCNIPAに優先権主張費用を納付しなければならず、当該国際公開日が改正された専利法実施細則が施行される前(当日を含む)である場合、改正された実施細則の施行日から3ヶ月内に優先権主張費用を納付しなければならない。出願人が期限満了日まで先出願副本を提出しないか、または関連証明文書を提出しない場合、または優先権主張費用を納付しないか不足している場合、優先権を主張しなかったものとみなす。

2. 分割出願期限

【第4条】 デザイン国際出願の出願人は、当該出願の国際公開日から2ヶ月内にCNIPAに分割出願を提出することができ、CNIPAは専利法および実施細則、専利審査指針の関連規定により処理する。

3. 新規性喪失の例外

【第5条】 出願人がデザイン国際出願に関連したデザインが専利法第24条第(2)号または第(3)号の場合に属すると判断する場合、デザイン国際出願声明を提出する際、そしてデザイン国際公開日から2ヶ月内にCNIPAに関連証明文書を提出して説明しなければならない。声明を提出しないか、または証明文書を提出しない場合、専利法第24条の規定を適用しない(専利法第24条:専利を出願した発明創造が出願日前6ヶ月内に次の各号に該当する場合には新規性を喪失しない。(2)中国政府が主管または承認した国際展示会で最初に展示した場合、(3)規定された学術会議または技術会議で最初に発表した場合)。

4. 権利者の変更

【第7条】 デザイン国際出願の出願人または専利権者が権利変更を申請した場合、国際事務局で関連手続を進行する以外に、CNIPAにも証明文書を提出しなければならない。証明文書が外国語である場合は、中国語訳文も共に提出しなければならない。証明文書を提出しないか不合格である場合は、CNIPAは当該権利変更は中国で効力が発生されないことを国際事務局に通知する。

ハーグ協定における中国指定出願に対する特約

ハーグ協定に加入した国は、各国の実情により締結した内容が多少異なる。そのうちハーグ協定において中国を指定する国際出願は次のような規定に従わなければならない。

1. 中国専利法により国際出願は次の事項を除き、1つのデザインのみを含むことができる。

(i) 同一の製品に対する複数の類似するデザインは最大10個まで1つの出願に含むことができ、そのうちの1つはメインデザインとして表示されなければならない。または

(ii) 同一の種類に属する製品に含まれている複数のデザインは、製品が慣例的に同時にセットで販売されたり使用され、各製品に含まれているデザインが同一のデザイン概念を有する場合、1つの出願に含むことができる。

実際に前記2つの内容は、改正前の中国専利法実施細則に規定した内容であり、改正される実施細則にもこの部分に関する改正はないとみられる。

2. 部分デザインを出願する場合、全体製品において権利を主張する部分のデザインを示す図面を提出しなければならない。

3. GUI出願の場合、出願人はGUIを含む全体製品、製品の部分デザインまたはGUI自体に対する出願を提出することができる。デザイン出願がGUIを含む全体製品であり、デザインの必須構成要素(essential feature)がGUIにのみ関連する場合、出願人はGUIを示す全体製品の直交図(orthographic view)を提出しなければならない。デザイン出願が全体製品の部分デザインであるGUIの場合、出願人はGUIを示す全体製品の直交図を提出しなければならない。GUIが電子機器に応用するように設計された場合、出願人は製品を示さずにGUIの図面のみを提出することができる。動的画像デザイン出願に対して、出願人はGUIの初期状態を示す直交図を正面図として提出しなければならず、残りの状態に対してGUIキーフレーム図面を状態変化図として提出しなければならない。前記図面は完全な動的パターン変化過程を判断するのに十分でなければならない。

4. 中国を指定する国際出願の国際登録または拒絶通知期間は、6ヶ月でなく12ヶ月である。

5. 国際登録公告日から12ヶ月内に非意図的に(unintentionally)伝達されない場合、中国法により保護が付与された日から国際登録は効力を発生する。

6. 国際登録部の国際登録所有権の変更記録はCNIPAで当該変更に対する適格文書を受付けるまで中国で効力を発生しない。

ハーグ協定を通じて中国を移行国として指定した出願に対する実務要求

中国専利法システムにおける規定は、ハーグ協定における規定と比較するといくつかの差異がある。

1. 権利獲得のフロー

ーグ協定では「即時登録」であって、出願と同時に登録されるが、中国専利法では初歩審査を経た後に登録される。ハーグ協定を通じて中国に移行した国際出願もCNIPAの初歩審査を経てから登録される。ここで、初歩審査とは単なる形式審査ではなく、明確な実質的欠陥の有無を審査する。つまり、デザイン専利保護対象であるのか、従来のデザインに属するのか、または従来のデザインと大きな差異点があるのか、図面がデザインを明確に示すことができるのか、単一性、補正範囲の違反有無、重複登録有無、およびその他書類と手続などについて審査する

CNIPA審査において拒絶理由が見つかると、国際事務局に拒絶理由通知書を発送し、国際事務局から出願人に拒絶理由通知書を伝達する。出願人は拒絶理由通知書に対してCNIPAに答弁書を提出することができ、答弁書は中国語で作成されなければならない。しかし、答弁内容が出願文書中の文字を修正する内容であれば、これに対応する英訳文も提出しなければならない。答弁過程において新たな拒絶理由が発生すれば、CNIPAは追加的に補正通知書または拒絶理由通知書を発行し、出願人はこれに対して追加的な答弁をすることができる。出願人の答弁が拒絶理由通知で通知した問題を解決できなかった場合、CNIPAは拒絶決定書を発行する。拒絶決定に対しては復審を請求することができる。ハーグ協定を通じて行われたデザイン専利出願の復審手続は、一般出願の復審手続と同一である(中国における復審は韓国の拒絶決定不服審判とほぼ類似しているが、最大の差異点は補正書提出が可能であるということである。)。

CNIPA審査において拒絶理由が見つからなければ、国際事務局に保護を授与すると声明し、登録公告を行い、WIPOから出願人に中国で登録されたことを通知する。デザイン専利権は公告日から発効する。

2. 出願文書に対する要求

中国におけるデザイン出願は、デザインの図面または写真およびデザインに関する要約説明など文書を全て提出しなければならない。要約説明は、図面または写真で示す当該製品のデザインに関する簡略な説明であり、1)デザイン製品の名称、2)デザイン製品の用途、3)デザイン設計要点、4)設計要点を最もよく示す代表図面または写真指定、5)部分デザイン出願の場合、全体製品での用途などを記載しなければならない。特にGUIデザイン出願である場合、GUIの用途を明確に記載し、製品名称で示す用途と対応しなければならない。

3. 単一性の要求

中国におけるデザイン専利出願は、10個以下の類似するデザインを1つの出願で同時に提出することもでき、セットで販売される場合には1つの出願で提出することもできる。単一性による拒絶理由通知書を受けた場合、国際公告日から2ヶ月内に分割出願を提出しなければならない。ハーグ協定を通じて中国に移行しても、前記3つの要求は全て満たさなければならない。

中国専利法システムは、専利法、専利法実施細則、および専利審査指針から構成され、2020年の専利法改正により実施細則および審査指針も改正されるべきであったが、未だ実施細則および審査指針の改正は進行中である。専利法には基本概念および手続などが規定されているが、より具体的な実務内容と関連した規定は実施細則および審査指針に規定されているため、専利出願に対する審査を円滑に行うために改正された実施細則および審査指針が間もなく公表されると思われる。