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識別力のない構成の結合商標が旧商標法第6条第1項第3号(現第33条第1項第3号)の「商品の原材料を普通に使用する方法で表示した標章のみからなる商標」に該当するか否か-大法院2022フ10128判決(2022.6.30.言渡)[登録無効(商)]
弁理士 梁松姫

1. 事件の概要

イ.権利者Aは2014年7月に標章「(ハングル:ROYAL BEEの音訳)」(以下、本事件登録商標)に対して商品類第3類の「化粧品」などを指定して出願し、別途の意見提出通知なしに2015年に登録された。

ロ.登録後、権利者Aは本事件登録商標に基づいて、化粧品に標章「」を使用していたBに、商標権違反を理由とした刑事告訴を行った。

ハ.これに対し、Bは本事件登録商標が「蜂やローヤルゼリーを含有する商品」などを意味するものと認識されて指定商品の性質表示(品質、原材料、成分)が直感される標章であるとして、旧商標法第6条第1項第3号(現第33条第1項第3号)の無効事由により無効審判を請求した。

2. 原審-特許審判院および特許法院の判断

イ.特許審判院(2020ダン1866号事件)→棄却審決(識別力認定)

審判院は、結合商標の識別力判断において標章の構成部分全体を一つとみなして特に顕著性があるか否かを判断しなければならないが、本事件登録商標はその全体として指定商品である「化粧品」などの品質、原材料、効能などの意味を表示するものとして使用されているとみるべき資料がなく、全体として「女王蜂」または「蜂やローヤルゼリーを含有する商品」の意味とも容易に認識されるとみることも難しいため、指定商品の性質(品質、原材料、成分)が直感されるとみることができず、旧商標法第6条第1項第3号(現第33条第1項第3号)の無効事由に該当しないとの理由により審判請求を棄却した。

ロ.特許法院(2021ホ3604登録無効(商)事件)→認容判決(識別力否定)

反面、特許法院は、既存の特許審判院の審決を覆し、本事件登録商標が指定商品の原材料である「ローヤルゼリー」や「蜂蜜」を含有する製品を表示したものと直感されると判断した。

つまり、特許法院はi)「ローヤルゼリー」と「蜂蜜」成分は、以前から皮膚老化を防止し、皮膚に栄養を供給する美容製品として「化粧品など」に多数使用されてきた点、ii)「ローヤルゼリー」と「蜂蜜」を原材料としている多数の化粧品の名称に「ROYAL(そのハングルの音訳(로열または로얄))」が含まれている製品名が国内でよく知られた化粧品ブランドに多数存在する点、iii)Aの製品も本事件登録商標を表記するに当たって「AY」「AZ」を「ROYAL BEE」より大きく使用しており、実際の取引界においても「ローヤルビー」のみで呼称されるよりは、「AYローヤルビー」、「C AYローヤルビー」などと呼称されている事情に照らすと、需要者と取引者は、化粧品などに使用された「ROYAL(そのハングル音訳)」は、「ローヤルゼリー」や「蜂蜜」を意味することを容易に認識することができるといえ、ここに「ローヤルゼリー」や「蜂蜜」を生産する「蜂」を意味する易しい英単語である「ビー(BEE)」が共に結合された場合、より容易に蜂の副産物である「ローヤルゼリー」や「蜂蜜」を直感させる可能性が高いと判断した。

したがって、本事件登録商標は一般の取引界において「ローヤルゼリー」や「蜂蜜」を意味する用語として使用される「ローヤル(ROYAL)」と、これを生産する蜂を意味する「ビー(BEE)」とが単純結合された形態に過ぎないため、通常の商品の流通過程で必要な表示であって、誰でもこれを使用する必要があり、その使用を望むため、これを特定人に独占排他的に使用するようにするのは公益上妥当でないところ、本事件登録商標の識別力を否定した。

3. 大法院の判断(2022フ10128登録無効(商)事件)-原審の破棄差戻し

しかし、大法院は、再び原審である特許法院の判断を覆し、本事件登録商標の識別力を認めた。

特に、大法院は「2つ以上の構成部分が結合してなる、いわゆる結合商標においては構成部分全体を一つとみなして識別力があるか否かを判断しなければならない(大法院90フ1208判決(1991.3.27.言渡)、大法院2016フ526判決(2019.7.10.言渡)など参照)」との判例を引用した上で、i)「ROYAL BEE」は「ROYAL」と「BEE」を結合して作った造語であって、取引社会で一般的に使用される表現でない点、ii)「ローヤルゼリー」や「蜂蜜」を原材料として使用せずとも、「로열(ハングル:ROYALの音訳)」や「ROYAL」を含む標章が使用された商品も多数存在する点、iii)「로열(ハングル:ROYALの音訳)」や「ROYAL」の字義的意味や取引上の観念などに照らすと、本事件登録商標が指定商品の原材料に「ローヤルゼリー」や「蜂蜜」が使用されたことを暗示しているとみることはできても、さらには指定商品にそのような原材料が使用されていることを直感させるようにすることによって、商品の原材料を普通に使用する方法で表示した標章のみからなる商標と断定することは難しいと判示した。

また、本事件登録商標は固有の意味を内包する2つの単語が結合された造語であって、これにより他人が商品の原材料に「ローヤルゼリー」や「蜂蜜」を使用していることを通常の方法で自由に表示することに関して如何なる影響も及ぼし得ないばかりか、本事件登録商標が化粧品の流通過程において誰に対しても必要な表示であるとみることもできないため、これをある特定人に独占的に使用するようにすることが公益上妥当でないとみることも難しいところ、登録商標が指定商品の原材料に「ローヤルゼリー」や「蜂蜜」を使用していることを直感するようにして原材料などを普通に使用する方法で表示した標章のみからなる商標と判断した原審の判断には、旧商標法第6条第1項第3号の法理を誤解して判決に影響を与えた誤りがあると大法院は最終的に判示した。

4. 本判決の意義

識別力のない各構成「ROYAL(ローヤル)」および「BEE(ビー)」の結合商標である本事件登録商標「」の識別力判断にあたり、特許法院と大法院の判断が一致しなかった。

特許法院は、「ローヤルゼリー」と「蜂蜜」を原材料にしている多数の化粧品名称に「ROYAL(そのハングルの音訳(로열または로얄))」が含まれている事情に照らすと、一般の需要者および取引関係者は、本事件登録商標から「ROYAL(そのハングルの音訳(로열または로얄))」は「ローヤルゼリー」や「蜂蜜」を意味するものであることを容易に認識することができるといえ、ここに「ローヤルゼリー」や「蜂蜜」を生産する「蜂」を意味する易しい英単語である「ビー(BEE)」が共に結合された場合、より容易に蜂の副産物である「ローヤルゼリー」や「蜂蜜」を直感させる可能性が高いと判断した。したがって、本事件登録商標は、「ローヤルゼリー」や「蜂蜜」を意味する用語として使用される「ローヤル(ROYAL)」と、これを生産する蜂を意味する「ビー(BEE)」とが単純結合された形態に過ぎない形態に該当するとして全体的な識別力を否定した。

反面、大法院では、本事件登録商標の「ROYAL BEE」自体を識別力判断の基準点に先ず置き、「ROYAL BEE」自体は造語であって、取引社会において一般的に使用される表現でない点、「ローヤルゼリー」や「蜂蜜」を原材料として使用せずとも「로열(ROYALのハングル音訳)」や「ROYAL」を含む標章が使用された商品も多数存在する点、「ROYAL」の字義的意味や取引上の観念などに照らすと、本事件登録商標が一般の需要者に直ちに「ローヤルゼリー」や「蜂蜜」が使用されたことが暗示される程度に過ぎず、「直感」されるとみることができないと判断した。

2つ以上の記号・文字または図形が結合してなる、いわゆる結合商標においては、その商標を構成している各部分を一つ一つ分離してみるものではなく、構成部分全体を一つとみた上で、特に顕著性があるか否かを判断しなければならない。

しかし、特許法院の判断は、本事件登録商標の全体を識別力判断の基準点に置くよりは、構成部分「ローヤル(ROYAL)」と「ビー(BEE)」のそれぞれを個別的に分離させた後、その諸般事情に基づいて全般的な識別力を判断した傾向がないわけではなく、大法院は、このような特許法院の判断を結合商標は全体として識別力を判断しなければならないという原則下において破棄した。

標章の識別力に関する判断は、主観的な判断に基づくしかなく、特に上記のような識別力のない構成の結合商標であるとしても、直ちに識別力を否定することはできず、全体的な識別力判断において客観的な結論を下すことは容易ではない。したがって、単に識別力のない商標の結合商標であるとしても、より安全な使用のためには、使用前に必ず専門家の検討が先行されなければならず、また、出願を行って識別力に対する特許庁の公式的な判断を受けておくことが、安全な商標使用のために極めて重要であるといえる。