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ファッションデザインの保護方案
弁理士 金月㫰

デザイナーAは、特異な図形と記号からなる特異な文様aをTシャツの前面に図案化して商品化した。この場合、デザイナーAがTシャツを知的財産権として保護を受ける方法にはどのようなものがあるであろう。

1. 著作権法上の保護

著作物は「人間の思想や感情を表現」したものであって、「創作性」がなければならない。著作権法第4条では、著作物の例示として小説などのような語文著作物、音楽著作物、演劇著作物、絵画・応用美術著作物などの美術著作物、建築著作物、写真著作物、映像著作物、地図・図表などの図形著作物、コンピュータプログラム著作物を設けている。この規定は例示規定に該当してはいるが、例示範囲内では原則的にファッションデザイン製品を保護する規定を設けていない。したがって、一般的に大量生産される商業的目的の製品である衣類、履き物、カバンなどファッションデザイン製品は、著作権法上の保護対象ではなく、デザイン権で保護すれば足りるため、著作権法上の保護が難しいとみることが妥当である。

ただし、著作権法第2条第15号では、「応用美術著作物は、物品に同一の形状に複製され得る美術著作物であって、その利用された物品と区分して独自性を認めることができるものをいい、デザインなどを含む。」と規定しており、純粋美術著作物のみならず、応用美術著作物の著作権法上の保護を明示している。

著作権法上の保護対象であるか否かと関連して、大法院判例は、生活韓服の場合、著作権法の保護対象となる著作物に該当しないとみなした(大法院2000ド79判決(2000.3.28.言渡))。また、「産業上の大量生産への利用を目的にして創作される全ての応用美術作品が直ちに著作権法上の著作物として保護されるとは限らず、その中でもそれ自体が一つの独立的な芸術的特性や価値を有しており、上述の芸術の範囲に属する創作物に該当してこそ著作物として保護される(大法院94ド3266判決(1996.2.23.言渡))。」としつつ、織物の染織に使用するための染織図案が応用美術品ではあるが、著作権法上の著作物ではないとした。

応用美術著作物の著作物性を認めた場合としては、大法院判例(大法院2003ド7572判決(2004.7.22.言渡)、いわゆる「ヒディンクネクタイ事件」)において『いわゆる「ヒディンクネクタイ」の図案が韓国民族伝来の太極文様および八卦文様を上下左右に連続反復したネクタイ図案であって、応用美術作品の一種であるとすれば、上記図案は「物品に同一の形状に複製され得る美術著作物」に該当するといえ、またその利用された物品と区分して独自性を認めることができるものであれば、著作権法第2条第11の2号(現行法第2条第15号)で定める応用美術著作物に該当する。』とした。これはファッションデザイン製品が一般的には著作権法上の保護対象ではないが、「物品と区分して独自性」がある場合、応用美術著作物としてデザイン保護法上の保護対象と重畳的保護が可能であることを意味する。

(イメージ出処:韓国特許庁のデザインマップ)

著作権の場合、登録や公開が権利発生の要件ではないため、創作と同時に著作権が発生するが、デザイン毎に応用美術著作物として著作物性があるか否かについては論争の余地があり得る。したがって、紛争の発生時、積極的な権利行使が難しいこともあるため、著作権法上の保護が万能ではないことに注意しなければならない。

2. デザイン保護法上の保護

デザイン保護法上の保護対象は、物品(物品の部分を含む)の形状・模様・色彩またはこれらを結合したものであって、衣類、カバン、ジュエリーなど一般的なファッションデザイン製品はデザイン保護法上の保護対象に該当する。

現代社会で毎日幾多の製品が創作され、公知となりつつ、類似する製品が数えきれないほど出ることとなり、デザイン類否の判断時、既に公知となった部分を除く場合、実際の独創的な部分は極めて狭い範囲であるため、登録デザインの権利範囲が非常に狭くなり得る。このような全体デザインとしての短所を補完するために、製品の一部分が既存のデザインに比べて特異な創作的要素があれば、部分デザインとしても保護が可能である。この場合には全体デザインにおいて他の要素が非類似点があるとしても、登録されたその部分を含む場合には、侵害を問うて積極的な権利行使が可能である点から実益がある。

また、デザイン保護法では、デザインが物品の外観であるため、比較的に流行に敏感であり、且つライフサイクルが非常に短い特性を反映して一部の登録要件のみを備えれば、早期に登録を受けることができるようにする一部審査登録制度を設けている。ファッションデザインと関連して第2類(衣類およびファッション雑貨用品)、第5類(繊維製品、人造および天然シート織物類)、第11類(装飾用品)は、一部審査登録対象に該当して審査段階では先行デザインとの対比が要求される実体審査が省略され、約1ヶ月以内に早期登録が可能である。

ただし、実体審査が省略されるため、他人のデザインを盗用した場合にも登録されるなど、望ましくない権利が量産される可能性を排除することができない。また、無権利者が不当な権利行使をする場合、正当な権利者が異議申立や無効審判を通じて対抗は可能であるが、無権利者の権利を消滅させるには相当な時間と費用がかかり、流行性がある物品の特性上、適期に販売することができず、莫大な被害が発生し得る点に留意しなければならない。

3. 不正競争防止法上の保護

不正競争防止および営業秘密保護に関する法律(略称:不正競争防止法)第2条第1号リ目では、商品形態が備えられた日から3年以内に他人が製作した商品の形態(試作品または商品紹介書上の形態を含む)を模倣した商品を譲渡する行為を不正競争行為とみなしている。不正競争防止法上の保護対象は登録が保護要件ではないため、商品の通常の形態でない創作的要素がある場合には、デザインとして登録を受けていなくても本規定を通じて一定部分の保護が可能である。

4. 商標法上の保護

商標とは、他人の商品と識別されるようにするための記号、文字、図形などをいい、商標法上の保護対象は、独立した商取引の目的物となる商品である。衣類、カバン、ジュエリーなどのファッションデザイン製品は商標法上の保護対象となる商品には該当するが、デザイン自体が非常に有名になってその商品の業界や消費者がこれを見て商標として認識しない以上、原則的に他人の商品と識別のための標識になることは難しい。したがって、商標法上ではその商品のデザイン(外観)を保護するのではなく、ロゴなどを商品の出処標識として保護を受けることができる。ただし、デザイン保護法上の保護対象物品があるように全ての商品に対して保護を受けることができるわけではなく、保護対象となる商品を指定(例:第25類の衣類、第18類のカバン、第14類の装身具、時計)して保護を受けなければならない。

5. むすび

デザイナーAのTシャツは、原則的に著作権法上の保護対象ではないが、特異な文様a部分は「独自性」と「創作性」が認められる限り、応用美術著作物として著作権法上の保護が可能である。

デザインとして出願する場合、一部審査対象である衣類として早期に登録が可能である。デザインは全体的な美感が類似する場合、類似するデザインとみなされるため、Tシャツの形状自体が特異な場合には、a部分を除いたTシャツ形状自体も別途に登録を受ける必要性がある。一方、Tシャツは一般的な形態であり、a部分が特異で創作的価値が高い場合には、a部分を部分デザインとして権利化して第三者が販売するTシャツの全体的な形態が異なる場合でも、a部分を含む場合には権利行使が可能になるようにすることが好ましい。

a部分がデザインであるばかりでなく、デザイナーAのアイデンティティとして他の衣類やファッション製品にも使用されるロゴであれば、商標として機能し得るため、各対象商品を指定商品にして商標権として保護を受けることができる。