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医薬品許可-特許連携制度の理解
弁理士 崔淨恩

医薬品許可-特許連携制度は、医薬品の品目許可の手続において新薬に関する特許権侵害の有無を考慮する段階を設けることによって、新薬の安全性、有効性に関する資料の利用を拡大しながらも、それに関する特許権をより積極的に保護しようとする趣旨の下に導入された制度であり、韓-米FTAの内容を最終的に反映して2015年3月15日から施行されている。

医薬品許可-特許連携制度は、大きく1) 医薬品特許目録の登載、2) 品目許可申請事実の通知、3) 販売禁止、および4) 優先販売品目許可の4つの手続からなるが、上記医薬品許可-特許連携制度の各手続を簡略に考察してその内容を下表に整理した。各手続の主体、対象および時期を中心に記述して各手続において注目すべき点を要約する。

 

主体

対象

時期

注意点

医薬品特許目録の登載

医薬品特許目録の登載は、製造または輸入医薬品の品目許可または変更許可を受けた者に認められる。
品目許可または変更許可を受けた当該医薬品に直接関連した特許権を医薬品特許目録に登載する。
-特許権は「登録特許」に限定される。
-品目許可を受けた当該医薬品に「直接関連した」特許権のみがその対象となる。
-登載対象となる特許権は、医薬品と関連した物質、剤型、組成物、医薬的用途に関するものに限定される。したがって、医薬品の製造方法、容器、包装、医療装置および道具に関するものは登載対象とならない。
-医薬品の主成分に該当する物質に関する特許権のみがその対象となる。したがって、主成分の製造に使用される原料物質、中間体、副産物や主成分でない添加剤などに対する特許権は対象でない。
品目許可または変更許可を受けた日、あるいは
特許の(設定)登録日から30日以内に申請書を提出しなければならない。
当該期間を経過して特許権登載を申請する場合には申請要件を充足することができず、返戻対象となり得る。
品目許可を受けた者は登載しようとする特許権の特許権者または専用実施権者の同意を受けなければならない。
ただし、登載を申請する者と特許権者が同一な場合であれば同意書提出は不要となる。

品目許可申請事実の通知

特許目録に登載された医薬品の安定性、有効性に関する資料に基づいて品目許可を申請したり、効能、効果に関する変更許可を申請した「後発製薬会社」は、
「特許権登載者(登載医薬品の品目許可を受けた者)」と「登載特許権者(登載医薬品の特許権者または専用実施権者)」に品目許可申請事実を通知しなければならない。
「後発製薬会社」は、「特許権登載者」および「登載特許権者」に、
品目許可申請日、品目許可申請事実、および登載特許の無効または非侵害判断の根拠を通知しなければならない。
品目許可などを申請した日から20日以内に品目許可などを申請した事実を通知しなければならない。
(通知義務の例外)
①登載特許権の存続期間満了、②登載特許権の存続期間満了後の販売を目的とする品目許可申請、または③特許権者などが通知しないことに同意した場合には、品目許可申請事実を通知しなくてもよい。
(通知事実の提出)
本手続の品目許可申請の事実を特許権登載者および登載特許権者に通知した者は、その事実を遅滞なく食品医薬品安全処長に提出しなければならない。

販売禁止

後発製薬会社が特許目録に登載された医薬品の安定性、有効性の資料に基づいて品目許可を申請した場合、
登載医薬品の特許権者または専用実施権者(注意:品目許可を受けた特許権登載者は販売禁止を申請できる主体ではない。)は、販売禁止を申請することができる。
登載医薬品の特許権者または専用実施権者は後発製薬会社の「後発医薬品」に対する販売禁止を申請することができる。
登載医薬品の特許権者または専用実施権者は、後発製薬会社から「品目許可申請事実の通知を受けた日」から45日以内に販売禁止を申請することができる。
上記販売禁止を申請した場合、食品医薬品安全処長は上記通知を受けた日から9ヶ月間、後発医薬品の販売を禁止させなければならない。
(条件)
特許権者などは無条件的に販売禁止を申請することができるのではなく、販売禁止申請の前に
①特許侵害禁止または予防請求の訴えの提起、②積極的権利範囲確認審判請求、または③相手方が請求した消極的権利範囲確認審判に対応した後に、販売禁止を申請することができる。
(例外)
特許目録に登載された特許権の無効、または通知医薬品が登載特許権の権利範囲に属しないという審決や判決などがある場合には、販売禁止とならない。
(販売禁止効力の消滅)
販売禁止が申請されて、販売禁止の効力が発生したとしても、①販売禁止が申請された医薬品が登載特許権の権利範囲に属しないという審決または判決がある場合、②侵害ではないとの判決がある場合、または③登載特許権が無効であるとの趣旨の審決または判決がある場合には、販売禁止の効力が消滅する。

優先販売品目許可

(申請)
品目許可申請事実の通知に対する義務がある者は優先販売品目許可を申請することができる。
また、優先販売品目許可を申請する者は、特許目録に登載された特許権に対して特許審判(無効審判、存続期間延長登録無効審判、または権利範囲確認審判)を請求した後に申請することができる。
(許可)
以下のような資格を全て有する者が優先販売品目許可を受けることができる。
①後発製薬会社のうち最も早い日に品目許可または変更許可を申請した者であること
②審判を請求し、登載特許権に関して特許の無効、存続期間延長登録の無効または当該医薬品が特許権利範囲に属しないとの趣旨の審決または判決を受けた者であること(上記審決は通知を受けた日から9ヶ月が経過する日以後に受けたものは除く。)
③次の要件のうちいずれか一つの要件に該当する者であること
1)最初に審判を請求した者であること、2)最初の審判が請求された日から14日以内に審判を請求した者であること、3)上記1)、2)に該当する者より先に②の審決または判決を受けた者であること
登載特許権の無効または非侵害を主張する後発製薬会社の医薬品が優先販売品目許可の対象となり得る。
(原則)
優先販売品目許可申請は医薬品に対する品目許可申請と同時に行われなければならない。
(例外)
品目許可後に通知義務のある特許関係に変更する場合には、変更許可申請時に優先販売品目許可を申請することができる。
(販売禁止)
優先販売品目許可を受けるようになると、①優先販売品目許可を受けた医薬品と同一の医薬品であり、②登載医薬品の安定性、有効性に関する資料に基づいて品目許可または変更許可を申請した医薬品のうち、登載医薬品と有効成分が同一の医薬品に対して、9ヶ月間販売が禁止される効果を得ることができる。
即ち、後発製薬会社のうち最も先に特許挑戦に成功した後発製薬会社には優先販売品目許可が認められ、他の後発製薬会社の優先販売品目許可医薬品と同一の医薬品の販売は9ヶ月間禁止となり得る。
また、上記販売禁止は特定要件を満たす場合、効力が消滅し得る。

上記で考察したように、医薬品許可-特許連携制度は、品目許可または変更許可を受けた者が特許権を医薬品特許目録に登載することによって制度が開始されるとみることができる。

特許権登載者および登載特許権者の観点からみると、特許権登載者および登載特許権者は、特許目録に特許権を登載することによって、以降の後発製薬会社の品目許可申請に対する通知を受けることができるようになり、上記通知を受けた特許権登載者および登載特許権者は、後発製薬会社に対する適切な措置を準備することができる。特に上記通知を受けた登載特許権者に限り、後発製薬会社などに審判または訴えを提起したり、相手方の訴えに対応すると同時に販売禁止を申請することによって、後発製薬会社の医薬品販売を阻止することができる。

また、後発製薬会社の観点からみると、登載された特許権に対する挑戦、およびこれに成功して優先販売品目許可を申請した者には他の後発製薬会社に優先して医薬品販売を許可することによって、最初に特許への挑戦の意思を明らかにした者に与える補償の性格を有する。


*参考資料:医薬品許可特許連携制度の民願人案内書(2018)、2020年医薬品許可特許連携制度の質疑応答集(2020.12)