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確定した審決の結論を覆すに値する有力な証拠が新たに提出された場合、商標法第150条で定める一事不再理の原則に違反するか否か(消極)-大法院2020フ10810判決(2021.1.14.言渡)[登録無効(商)]
弁理士 方恩貞

1. 事件の概要

特許審判院は、先使用商標「」が国内でほとんど知られておらず、且つ外国でも周知・著名な商標であるとみることが難しい点に照らして、本事件登録商標「」は、先使用商標「」の国内市場参入を阻止したり、代理店契約締結を強制する目的、または先使用商標の名声に便乗する目的で出願したものと断定することはできず、旧商標法(2007.1.3.法律第8190号で改正される前のもの、以下同一。)第7条第1項第12号に該当しないとの趣旨の審決を下し(特許審判院2013.8.19.付2012ダン1172審決)、これに対して当事者が不服せず、上記審決が確定した(以下、「先行の確定審決」という。)。

本事件の争点は、後行の審判請求が先行の確定審決と同一事実および同一証拠によるものであって、一事不再理の原則に違背して許容されるか否かである。

2. 特許法院の判断

特許法院は、本事件審決で新たに提出された証拠によるとしても、本事件登録商標が旧商標法第7条第1項第12号に該当するといえないため、上記証拠は先行の確定審決の結論を覆す程に有力でない証拠であって、先行の確定審決の証拠と同一証拠に該当し、結局、本事件審判請求は先行の確定審決と同一事実および同一証拠によるものであって、一事不再理の原則に違背して許容されないと判断した。

3. 大法院の判断

先使用商標を使用した製品の販売期間、広告およびメディア報道の内訳、売上高などを総合的に考慮してみると、先使用商標は、本事件登録商標の出願日である2006年3月14日当時に自転車などと関連して米国とカナダの需要者間に特定人の商標として顕著に認識された商標であるとみることができる。また、先使用商標の周知性、本事件登録商標と先使用商標との類似性、原告と訴外1の契約締結の内訳とその内容、訴外1と訴外2の関係、本事件登録商標の出願の経緯などに照らしてみると、訴外2は先使用商標の使用者である原告に損害を加えようとするなどの不正な目的を持って使用するために本事件登録商標を出願したといえる。結局、先使用商標の認知度および訴外2と訴外1の関係などと関連して本事件で新たに提出された証拠は、本事件登録商標が旧商標法第7条第1項第12号に該当しないという先行の確定審決の結論を覆すに値する有力な証拠に該当するため、本事件審判請求は一事不再理の原則に抵触するといえない。

それにも拘らず、原審は、その判示のような理由のみにより本事件審判請求は一事不再理の原則に違背して許容されないと判断したため、このような原審の判断には旧商標法第7条第1項第12号および一事不再理の原則に関する法理を誤解した誤りがあるとした上で、原審判決を破棄し、事件を再び審理・判断するように原審法院に差し戻した。

4. 本判決の意義

『一事不再理の原則を定めた商標法第150条が規定する「同一証拠」には、先に確定した審決の証拠と同一証拠だけでなく、その審決を覆すことができる程に有力ではない証拠も含まれる。したがって、確定した審決の結論を覆すに値する有力な証拠が新たに提出された場合には一事不再理の原則に違反するといえない(大法院 2004フ42判決(2005.3.11.言渡)など参照)』と判示した既存の態度に基づいて、一事不再理の原則の適用要件である「同一証拠」に該当するか否かについて判断した事案であって、「不正な目的」の有無を判断するために提出された証拠が先に確定した審決の結論を覆すに値する有力な証拠であれば、これに基づいて先行の確定審決と同一事実に対して審判を請求しても、「同一証拠」に該当しないため、後の審判請求が一事不再理に抵触しないこともあるという点を判示したという点において本判決の意義がある。