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権利範囲の属部の判断における製造方法が記載された物の発明の請求項(Product by process請求項)の解釈-大法院2020フ11059判決(2021.1.28.言渡)【権利範囲確認(特)】[公2021上、552]
弁理士 宋保炅

【判示事項】

[1] 請求の範囲が全体的に物として記載されていると共に、製造方法の記載を含んでいる発明が「物の発明」に該当することを判示し、上記のような「製造方法が記載された物の発明」の権利範囲に属するのか判断する方法を判示した事例

[2] 甲株式会社が名称を「ポラプレジンクを含有する安定した錠剤剤型」とする特許発明の特許権者である乙株式会社を相手取って、名称を「湿式法で製造されたポラプレジンク含有錠剤」とする確認対象発明が特許発明の権利範囲に属しないと主張した上で消極的権利範囲確認審判を請求し、特許審判院がこれを認容する審決を下した事案において、特許発明の請求の範囲第1項は、直接打錠法で製造されることによって特定される構造と性質を有する錠剤であるため、確認対象発明は、文言的に第1項発明の権利範囲に属せず、第1項発明と均等関係にあるとみることもできないとの理由により確認対象発明が特許発明の権利範囲に属しないとした原審の判断を支持した事例

【判決の要旨および大法院の判断】

[1] 特許法第2条第3号は、発明を「物の発明」、「方法の発明」、「物を生産する方法の発明」に区分しているところ、請求の範囲が全体的に物として記載されていると共に、製造方法の記載を含んでいる発明(以下、「製造方法が記載された物の発明」という。)の場合、製造方法が記載されているとしても発明の対象は製造方法でなく、最終的に得られる物自体であるため、上記のような発明の類型のうち「物の発明」に該当する。物の発明に関する請求の範囲は、発明の対象である物の構成を特定する方式で記載されなければならないため、物の発明の請求の範囲に記載された製造方法は、最終生産物である物の構造や性質などを特定する一つの手段としての意味を有するに過ぎない。したがって、製造方法が記載された物の発明の権利範囲に属するのかを判断するに当たり、技術的構成を製造方法自体に限定して把握するのでなく、製造方法の記載を含んで請求の範囲の全ての記載により特定される構造や性質などを有する物と把握して確認対象発明と対比しなければならない。

[2] 甲株式会社が名称を「ポラプレジンクを含有する安定した錠剤剤型」とする特許発明の特許権者である乙株式会社を相手取って、名称を「湿式法で製造されたポラプレジンク含有錠剤」とする確認対象発明が特許発明の権利範囲に属しないと主張した上で消極的権利範囲確認審判を請求し、特許審判院がこれを認容する審決を下した事案において、特許発明の請求の範囲第1項(以下、「第1項発明」という。)と確認対象発明は、一定の比率と大きさを限定したポラプレジンクを有効性分として含んでいるという点では同一であるが、第1項発明は直接打錠法で製造されることによって特定される構造と性質を有する錠剤であるのに対し、確認対象発明は湿式法で製造されることによって特定される構造と性質などを有する錠剤であるため、確認対象発明は文言的に第1項発明の権利範囲に属せず、さらには、確認対象発明に特許発明の特有の解決手段が基づいている技術思想の核心が含まれているとみることができず、第1項発明の直接打錠法と確認対象発明の湿式法とは実質的作用効果が同一であるとみることは難しいため、確認対象発明は第1項発明と均等関係にあるとみることもできないとの理由により確認対象発明が特許発明の権利範囲に属しないとした原審の判断を支持した。

【事案の概要】

被告は、2018年11月15日に原告を相手取って特許審判院に確認対象発明が「ポラプレジンクを含有する安定した錠剤剤型」という名称の本事件特許発明(特許番号省略)の権利範囲に属しないと主張した上で消極的権利範囲確認審判を請求し、特許審判院は2019年3月7日に確認対象発明が本事件特許発明の権利範囲に属しないとの理由により被告の審判請求を認容する本事件審決を下した。

原告は、2019年5月9日に被告を相手取って特許法院に本事件審決の取消を求める訴えを提起した。特許法院は、2020年7月17日に本事件特許発明の請求の範囲第1項(以下、「本事件第1項発明」といい、残りの請求項も同じ方式で記載する。)と確認対象発明とは構成が異なり、互いに均等関係にあるとみることも難しいため、確認対象発明は本事件第1項発明、およびその従属項発明である本事件第2~7項、第9~11項の権利範囲に属しないとして本事件審決を維持した。

具体的に原審は、本事件第1項発明と確認対象発明は、一定の比率と大きさを限定したポラプレジンクを有効性分として含んでいるという点では同一であるが、本事件第1項発明は直接打錠法で製造されることによって特定される構造と性質を有する錠剤であるのに対し、確認対象発明は湿式法で製造されることによって特定される構造と性質などを有する錠剤であるため、確認対象発明は文言的に本事件第1項発明の権利範囲に属しないとの趣旨で判断し、同じ理由により確認対象発明に本事件特許発明の特有の解決手段が基づいている技術思想の核心が含まれているとみることができず、本事件第1項発明の直接打錠法と確認対象発明の湿式法とは実質的作用効果が同一であるとみることが難しいため、確認対象発明は本事件第1項発明と均等関係にあるとみることができないと判断した。

大法院は、上記原審の判決理由に法理を誤解した誤りがないとみた上で、原告の上告を棄却した。

【判決の意義】

2020フ11059判決は、Product by process請求項の特許要件に関する大法院2011フ927全員合議体判決(2015.1.22.言渡)の法理を権利範囲事件にもそのまま適用して、特許要件と権利範囲の判断における解釈基準を一致させてProduct by process請求項の解釈基準を明確にした。

【参照条文】

[1] 特許法第2条第3号、第42条第6項、第97条、第135条
[2] 特許法第2条第3号、第42条第6項、第97条、第135条

【参照判例】

[1] 大法院2011フ927全員合議体判決(2015.1.22.言渡)[公2015上、270]