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企業回生手続における継続的取引契約の処理
YOU ME 法務法人 弁護士 全應畯・辛東桓

Ⅰ. はじめに

事業の継続に顕著な支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済できない場合、または債務者に破産の原因である事実が生じる虞がある場合には、債務者は法院に回生(再生に相当)手続開始申請を行うことができる(債務者回生法第34条第1項)。

債務者回生法による企業回生手続は、過去に法定管理と呼ばれた手続である。過去の「会社整理法」、「和議法」、「破産法」、「個人債務者回生法」、「企業構造調整促進法」から構成される所謂倒産法が2006年4月1日に債務者回生法に統合された。債務者回生法では既存の会社整理法の会社整理手続と和議法の和議手続を統合して企業回生手続を設けた。

一定の契約を締結して継続的取引関係にある相手会社が企業回生手続に入る場合がしばしばある。この場合、両社間に存続していた契約関係やその契約により両側が有する権利、義務が如何に処理されるのかに対する判断は、重要でありながらも簡単ではない問題である。これに基づいて回生手続で債権者が申告する回生債権の対象乃至範囲が決定されるためである。回生債権であるにも拘らず法律が定めた期間内に回生債権として申告しなければ、当該債権の弁済を全く受けられないこともある。

II. 事件の概要

A社は、アクアリウム施設を運営する会社であり、B社は、A社とアクアリウム入場券に対するオンライン独占販売代行契約を締結した会社である。B社は、上記オンライン独占販売代行権を受ける代価としてA社に10億ウォンに達する巨額の前渡金を先に支払った。B社は、A社との契約により入場券販売代行業務を行い、その販売代金のうちのB社の販売代行手数料を除いた金額(=A社に支払う入場券収益金)を前渡金10億ウォンから控除していく方式で契約を履行した。

しかし、B社がまだ前渡金を全て控除していない時点でA社が法院に債務者回生法による回生手続開始申請を行い、法院はA社の申請を受け入れて回生手続開始決定を下した。法院の回生手続開始決定が下されると、A社はB社に回生手続が開始されたため、既存の独占販売代行契約による義務を履行することができないと主張した上で、B社の独占販売代行権を否定し、B社の入場券販売を妨害した。

これに対してB社は、A社の回生手続開始決定時点まで控除できなかった前渡金残額をA社の回生事件に対して回生債権として申告する一方で、継続してアクアリウム入場券を販売しつつ、手数料を除いた販売代金を前渡金残額から控除した。そうするうち、回生手続において、B社が回生債権として申告した前渡金返還債権が含まれている回生債権者表が確定した。その後、A社はB社の独占販売代行権を無視して第三者を通じてオンラインによるアクアリウム入場券を販売しつつ、B社が販売した入場券を全て取消してしまった。そこで、それ以上アクアリウム入場券を販売できない状況に至ったB社は、結局A社を相手取って販売差止仮処分申請を行った。

当法務法人はB社を代理して本販売差止仮処分事件を遂行した。

III. 本事件の争点

1. 回生手続開始決定による独占販売代行契約の効力

本販売差止仮処分事件の主な争点の一つは、仮処分訴訟が続いている現在、B社の独占販売代行権が有効に存続するか否かであった。仮処分申請のための被保全権利の問題である。

一般的に継続的取引関係を規律する契約書には、一方の回生手続が開始されれば、相手方が契約を解除できると規定されている場合が多い。通常、契約を解除し、その結果発生する金銭債権を回生債権として申告する。そうなれば、契約の当事者は相手方の回生手続が開始されれば、常に契約を解除すべきか、契約を解除する場合より契約上義務を履行することがより利益になる場合は如何に対応すべきかが問題となる。

先ず、問題となった契約による財産上の請求権が債務者回生法第118条の「回生債権」に属する場合には、契約を解除しない状態で認められる財産上の請求権の価値と、契約が解除されることによって発生する金銭債権の価値とを判断してみる必要があるが、大部分の場合、大差ない可能性が高い。

反面、双方未履行双務契約には債務者回生法第119条が適用されるため、問題となった契約が双方未履行双務契約であるか否かに対する判断は非常に重要である。債務者回生法第119条第1項の規定により管理人が債務の履行をする時に、相手方が有する請求権は回生手続と関係なく弁済しなければならない「公益債権」となるためである(債務者回生法第179条第1項第7号)。つまり、契約を解除する場合よりも契約上義務を履行することがより利益となる場合、契約当事者が契約を解除せず、回生手続の管理人も一定の時点まで契約の解除を選択しなければ、当該契約は回生手続と関係なく有効に存続する。

本販売差止仮処分事件の一審でB社を代理した当法務法人は、回生手続開始当時にA社とB社の独占販売代行契約は双方未履行双務契約であるという事実、および回生手続で管理人が債務者回生法第119条による契約解除をしなかったという事実を主張、証明した。仮処分事件法院は当法務法人の主張を受け入れてB社の独占販売代行権が有効に存続すると判断することによって本事件仮処分の被保全権利を認めた。

2. B社が前渡金残額を回生債権として申告した行為の効力

債務者回生法第168条、第255条第1項は、回生債権者表などの記載が「確定判決と同一の効力」を有すると規定している。事案の概要でのように、本事件でB社が前渡金残額に該当する金銭債権を回生債権として申告し、これを含む回生債権者表が確定した。したがって、この場合、A社は回生計画案の弁済計画によりB社に弁済を進行しなければならないが、このように回生債権者表が確定してA社のB社に対する前渡金返還債権の弁済義務が発生したとすれば、債務者回生法第119条にも拘らず、B社の独占販売代行権が認められるか否かはまた別の争点である。回生債権で弁済も受け、独占販売代行権も認められれば、事実上、二重弁済に該当するためである。

しかし、公益債権を単に回生債権として申告したとして、その性質が回生債権に変更されるとみることはできず、また、公益債権者が回生債権として申告しておらず、後で公益債権として認められなくなれば、その権利を失うようになることを憂慮して、一旦回生債権として申告したというだけで、直ちに公益債権者が自己の債権を回生債権として取り扱うことに対して明示的に同意をしたり、または公益債権者の地位を放棄したとみることはできない(大法院2004ダ3512、3529(反訴)判決(2004.8.20.言渡))。

したがって、B社が前渡金残額に該当する金額を回生債権として申告したとしても、債務者回生法第119条、第179条により公益債権として認定されるB社の独占販売代行権が回生債権として取り扱われることはなく、そのような回生債権申告行為のみでB社が公益債権者の地位を放棄したとみることはできないところ、B社の独占販売代行権は依然として有効である。

一方、債務者回生法第168条、第255条第1項でいう「確定判決と同一の効力」とは、既判力でなく、確認的効力を有して回生手続内部にあり、不可争力があるという意味に過ぎないものであるため、債務者や他の債権者としては別個の訴訟手続で債権の存在を争うことができる(大法院2017ダ204131判決(2017.6.19.言渡))。

つまり、回生債権者表が確定したとしても、B社が申告した前渡金返還債権が存在しない以上、A社はこれを争って弁済を拒否することができる。もし、A社がB社に弁済した金銭があれば、これは存在しない債権の弁済であるため、不当利得返還の問題で処理されれば十分である。したがって、回生債権者表の記載が確定判決と同一の効力を有するという事実は、B社の独占販売代行権の効力に何等影響を与えない。

本販売差止仮処分事件の一審法院は、上記のような当法務法人の主張を受け入れてB社の独占販売代行権が有効に存続すると判断し、B社の販売差止仮処分申請を認容した。

IV. むすび

回生手続と関連した法律関係は、これに対する事前知識や経験が十分でなければ把握することが難しい。したがって、取引相手会社の回生手続が開始される場合、債権者会社は法律専門家の手を借りて双方の契約が如何なる契約であるのか、相手方に有する請求権が回生債権または公益債権であるのかを検討して判断することが非常に重要である。正確な検討結果による正しい対応があってこそ、相手会社の回生手続進行による損失を最小化し、法律で保護される権利を最大限に守ることができる。