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登録商標が一部構成の識別力がなく、モチーフが類似する標章を多数人の出所表示として使用しているにも拘らず全体として識別力を認められることができるか否か、短期間の広報および社会的話題となった先使用商標の著名性を認めることができるか否か、およびモチーフが類似する商標間の類否-大法院2019フ11787判決(2020.5.14.言渡)【登録無効(商)】
弁理士 金源森

1. 事件の概要

[争点]

韓国の食品企業M社(以下、「原告」という。)が競争会社である韓国の食品企業K社(以下、「被告」という。)の登録商標「」に対して提起した無効審判請求において、i) 識別力がないことを理由として旧商標法第6条第1項第7号、ii) 訴外第三者である韓国の食品企業H社の先使用商標「」が著名性を獲得していたため、著名な他人の商品との混同の虞があることを理由として旧商標法第7条第1項第10号、iii) 需要者欺瞞の虞があることを理由として旧商標法第7条第1項第11号の該当有無が争点となった。

[事件の背景]

原告の後出願登録商標「」に対して、被告が先出願登録商標「」を理由として無効審判請求をすると、対応策として先登録商標に対して識別力がないこと、第三者の著名な先使用商標「」との混同の虞、および需要者欺瞞を理由として無効審判を請求した(先行無効事件は、特許法院2019ホ2851判決(2019.10.2.言渡)で後出願登録商標「」の無効趣旨の判決が2019年10月22日付で確定した。)。

2. 特許法院および大法院の判断

大法院は、本判決において、特許法院の判断に法理の誤解や自由心証主義の限界を逸脱して必要な審理を尽くさないなどの誤りがないと判断したところ、特許法院の具体的な判断を中心に考察する。

1) 旧商標法第6条第1項第7号に該当するか否か

本事件登録商標「」で文字部分である「허니버터아몬드(ハングル:ハニーバターアーモンド)」と「HONEY BUTTER ALMOND」は、指定商品に対して識別力がないが、 のような図形が結合されており、当該表現が指定商品と関連してありふれて使用される表現方式であるとみることは難しく、製品包装図案が指定商品である菓子類に対して識別標識として機能しているため、識別力が認められた。

①原告の主張

また原告は、i) 出所表示ではなく、包装紙デザインとして使用、ii) 別途の標章の使用、iii) 需要者が同種業界製品と比較して特定会社の製品として認識できないというアンケート調査結果、iv) モチーフが類似する標章が同種製品に多数使用されているため、識別力がないと主張した。

②法院の判断

これに対して、i) 特許法院は、被告が包装前面に使用してきた点、指定商品の実取引態様において図形商標により製品出所を識別することが一般的な点などを理由として識別力を認め、ii) 他の商標が表示されていることを理由として出所表示機能を否定することができないとした。iii) また、標章の識別力は、特定人の製品であるのか知らなければならないものではなく、商品標識であることを認識することができれば十分であり、iv) 同種商品の包装デザインのうち、図形の外観が類似する製品は一つだけであるため、出願当時に識別力がなくなったわけではないと判断して原告の主張を否定した。

2) 旧商標法第7条第1項第10号に該当するか否か

先使用商標「」の著名性は、本事件登録商標の出願時を基準に判断し、次のような事実を認めた。i) 10~20代の年齢層を中心にSNS上で大きな人気を得て短期間に高売上額を達成した点、ii) 発売日から2ヶ月後である2014年10月に全てのコンビニエンスストアのスナック類販売量1位となった点、iii) 検索の結果、需要者が上記製品の購入先を尋ねるなど、多数のネット上の書き込みが確認される点などを認めて周知商標とみなす余地があることを認めた。

しかし、i) 本事件登録商標の出願時を基準に先使用商標の使用期間がわずか8ヶ月に至らなかった点、ii) 図形部分が出所表示として需要者に顕著に知られたとすることが難しい点、iii) 広告費など具体的な証拠が提出されず、先使用者が発売日から1ヶ月でオフラインマーケティングを中断した点、iv) 商品の品切現象は需要予測の失敗、工場増設の遅延などによる一時的現象である点、v) 「一時的な人気製品」という反対の趣旨の記事が報道された点などを理由として、本事件登録商標の出願日当時に著名商標に至ったとまで認めるには足りないと判断した上で、原告の主張を否定した。

3) 旧商標法第7条第1項第11号に該当するか否か

先使用商標「」と本事件登録商標「」は、識別力がない文字部分よりも図形部分を含む全体の外観の類否を中心として判断しなければならず、文字部分から導き出される呼称、観念も非類似であるばかりでなく、図形の一部に共通点があるとしても、図形に含まれているアーモンド、ポテトチップ、ハチの擬人化の有無など表現方式の差などにより、標章が非類似であるため、他の要件を考察することなく、原告の主張を否定した。

したがって、原告の全ての主張は理由がないため、原告の請求を棄却し、大法院はこれに対して法理誤解などの誤りがないことを確認した。

3. 本判決の意義

従来は需要者の商標認識度の判断において「使用期間」を考慮していたが、その基準は不明確であった。しかし、今回の事件を通じて、需要者に製品の供給が需要を充足させることができず、社会的話題となる程度に広く知られた場合でも、使用期間などが短い場合は著名性の認定に限界があることを確認したという点で意義がある。

もちろん、指定商品である「菓子類」において、取引界で識別力のない文字商標が製品の商標としてありふれて使用されており(例:チョコパイ、セウカンなど)、包装前面に表示された図形商標が商品の識別標識として主に使用される点を考慮すると、上記判例は、需要者に広く知られた「허니버터칩(ハングル:ハニーバターチップ)」という文字部分よりも包装紙の図形部分の著名性の認否を考慮したという点から、今回の判例が一般的な著名性の判断に一括的に適用されるとみることは難しいと判断される。

ただし、旧商標法第7条第1項第10号(現商標法第34条第1項第11号)の商標の「著名性」と「製品の混同」は互いに異なる要件であるという点、「ノイズマーケティング」も広報の手段として活用されているという点、「品切現象」が出た本質的な理由、最近SNSなど需要者への伝播力が速い広報やマーケティング手段が使用されているという点にも拘らず、使用期間が短いという理由により商標権利者が得た認識度が制限された。したがって、今後の事件における著名性の認定において使用期間が重要な要素であることを明確にし、著名性の認定がさらに制限され得ることを留意しなければならないだろう。