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中国法院、単一色彩商標の特定位置の使用時における商標性認定
ニュージーランド弁護士 金叡娜

絶えず変化する環境の中で立体商標、音商標、色彩商標、位置商標など非典型商標(non-traditional trademarks)の使用、および登録に向ける事業主の挑戦と試みはただ一度の中断もなく続いてきており、これに対する登録性判断基準は、専ら各国法院の担当となって各々異なる基準で非典型商標の登録性を判断してきた。

最近、中国ではクリスチャン・ルブタン(以下、「CL」という。)が出願した単一色彩商標とその結果から刮目すべき発展が表面化している。

ファッションフォロワー(Fashion Follower)なら誰でも知るほどのレッドソール(赤い靴底)靴がそれである。CLはここ数年間自社のハイヒールのシグネチャーブランドであるレッドソールの登録のために紛争を続けており、その主な主張は、靴の赤い靴底一つだけでも自社の靴製品の出所を表示するということである。

CLは、自社のレッドソールデザイン(No. 1031242)を第25類の女性ハイヒール靴商品に対して国際商標として出願し、当該商標権利を中国でも保護を受けるために中国を「指定国」として指定した。しかし、この国際商標は中国商標局(CTMO)から当該標識が当該商品に対して「識別力がない」という理由で拒絶決定を受けCLはこれを不服として拒絶復審、第1審、第2審訴訟まで進むようになり、最終的に昨年12月に北京高級人民法院は最終審である第2審判決を下した。

この判決は中国知的財産権コミュニティから多くの注目を受けており、これは必然的なCL側の勝利とみなされている。これは北京高級人民法院がCLの商標が単一色彩商標であって、商品の特定位置に付着して使用される商標であるとみなし、最初に商標法第8条に基づいてこのような形態の商標の登録性(registrability)を認めた判決を下したためである。このような北京高級人民法院判決の重要性と示唆点を把握するために、CLの国際商標明細(specifications)および中国商標法第8条規定についてより具体的に理解する必要がある。

中国商標法第8条は、「自然人、法人またはその他の組織の商品を他人の商品と区別することができる文字・図形・アルファベット・数字・立体標識・色彩の組み合わせ、および音などと、これらの要素の組み合わせを含む標識は、全て商標として登録出願することができる。」と明示している。

上記条項では位置商標または単一色彩商標の登録性に関して言及していない。したがって、北京高級人民法院の判決が下される前まで商標審査官および法院は、これまで多くの出願人が続けてきた位置商標または単一色彩商標登録のための試みにも拘らず、一般的な典型商標よりも慎重かつ厳格な基準で審査してきており、登録の壁を超えることが困難であったことは事実である。

世界知的所有権機関(WIPO)の場合、CLのレッドソールの国際商標明細を「主張された色彩関連情報:Red(赤色)-PANTONE18.1663TP号、商標はレッド色彩が適用された靴底である(靴のアウトラインは商標に含まれないが、商標の位置を示すために使用された)」と記録している。2

商標評審委員会(以下、「TRAB」という。)は、最初はレッドソール商標を一般的な図形標章とみなした上で、本出願を識別力がないという理由で登録拒絶し、第1審では北京知識産権法院がハイヒール靴形態がこの商標の構成要素のうちの一部に含まれ、そのため、TRABはこの商標の識別力を立体(3D)商標として再び検討しなければならないとした。

北京高級人民法院は、レッドソール商標を本質的に商品の特定位置に付着する単一色彩商標とみなし、一般的な図形標章や立体商標ではないと判断した。レッドソール商標の象徴的要素は、商標法第8条に明示的に列挙された要素ではないが、登録性ある標識から明示的に排除されたものでもないため、TRABと北京知識産権法院のいずれもが共にレッドソール商標の明細定義において誤りを犯したと判断し、したがって、TRABにレッドソール商標と関連した全ての証拠を検討し、当該商標の識別力有無に対して再判断して新たな決定を下すよう命令判決をした。

北京高級人民法院のこのような判決は、非典型商標の使用による識別力(acquired distinctiveness)の証拠基準に対する論争を完全に終息させたわけではなかった。それにも拘らず、北京高級人民法院の自由主義的接近を通じた商標法第8条の解釈は、関連論争において重要な躍進を成し遂げたことは否定できない事実である。これは事業主に十分な識別力ある非典型商標に対する登録および保護を追求するようにする新たな一頁を開いたのである。

本事件から得られる実質的な教訓は、CLのように非典型商標を出願しようとする時、正確な商標明細を作り、開拓しなければならないという点であり、挑戦し続ければ、位置特定なしでも単一色彩商標を登録することや、特定の色彩なしに純粋な位置商標としての登録が可能になると展望してみる。しかし、現時点では位置要素(position element)と色彩要素(color element)2要素を結合した商標を出願することが独立要素出願よりも高い登録可能性を計ることができるのは言うまでもない。