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特許が無効と確定された場合、特許発明の実施契約に影響が及ぶか否か-大法院2018ダ287362判決(2019.4.25.言渡)【損害賠償(知)】[公2019上、1179]
弁理士 崔映珠

【判示事項】

特許発明の実施契約締結以降に特許が無効と確定された場合、特許権者が特許発明の実施契約が有効に存在する期間の間の特許実施料に対する支給を原則的に請求することができると判示した事例

【判決の要旨および大法院の判断】

特許が無効と確定されると、特許権は特許法第133条第1項第4号の場合を除いては、初めからなかったものとみなされる(特許法第133条第3)。しかし、特許発明の実施契約が締結された以降に契約の対象である特許権が無効と確定された場合、特許発明の実施契約が契約締結時から無効となるのかは、特許権の効力とは別個に判断しなければならない。

特許発明の実施契約を締結すると、特許権者は実施権者の特許発明実施に対して特許権侵害による損害賠償やその差止などを請求することができず、特許が無効と確定される前には特許権の独占的・排他的効力により第三者の特許発明実施が差し止められる。このような点に照らし合わせて特許発明の実施契約の目的となった特許発明の実施が不可能な場合でなければ、特許無効の遡及効にも拘らず、そのような特許を対象にして締結された特許発明の実施契約がその契約の締結当時から原始的に履行不能状態にあったとみなすことはできず、ただし、特許無効が確定されるとその時から特許発明の実施契約は履行不能状態に陥るようになるとみなすべきである。

したがって、特許発明の実施契約締結以降に特許が無効と確定されたとしても、特許発明の実施契約が原始的に履行不能状態にあったか、またはその他に特許発明の実施契約自体に別途の無効事由がない限り、特許権者は原則的に特許発明の実施契約が有効に存在する期間の間の実施料支給を請求することができる

【事案の概要】

原告と被告は、20116月頃に口頭で特許発明の実施契約を締結した。具体的に「原告は被告に本事件発明に関する通常実施権を許諾し、被告は原告に実施料として月650万ウォンを支給する。」という本事件約定をした。被告が201431日から実施料支給を遅滞して原告は2014521日に本事件約定を解除した。

原審は、このような事実関係に基づき、それ以降に本事件発明が無効と確定されたという事情のみでは、本事件約定が原始的に履行不能状態にあったとみなすことができず、原告と原告継承参加人の未支給実施料請求が権利濫用に該当せず、被告は、201431日から契約が解除された2014521日までの未支給実施料17,403,225ウォンを支給する義務があると判断した。その他に本事件約定自体に別途の無効事由があったとみなすべき事情もないと判示した。

大法院は、原審の判断は上述した法理に照らし合わせて正当であり、上告理由の主張のように特許権濫用に関する法理を誤解したり、転付命令の効力を誤って判断するなどして判決に影響を与えた誤りがないと判示した上で、被告の上告を棄却した。

【判決の意義】

本判決は、特許発明の実施契約締結以降に特許が無効と確定された場合、特許発明の実施が不可能な場合でなければ、特許無効の遡及効にも拘らず、実施契約がその契約の締結当時から原始的に履行不能状態にあったとみなすことはできないため、特許権者が特許発明の実施契約が有効に存在する期間の間の特許実施料に対する支給を原則的に請求することができると判示したものである。

【参照条文】

[1] 特許法第100条
[2] 特許法第102条
[3] 特許法第133条
[4] 民法第390条

【参照判例】

[1] 大法院20124266642673判決(2014.11.13.言渡)[2014下、2323]